商品紹介
統合失調症者は、「この国に生まれたる不幸」(具秀三, 1918)と評されるほど、日本の精神医療の中で長らく深刻な人権侵害にさらされてきた。薬物療法が主流となった現代においてもなお、わが国の精神科入院治療は入院日数・病床数・強制入院手続きのいずれをとっても世界に類を見ない劣悪な環境にある。それどころか、状況はより過酷な方向へと進んでいるとさえ言える。このような現実に対し、臨床心理学はその独自性をもって何ができるのか。本書は、その問いへの一つの答えを、集団精神療法という「場」のカに見出した研究の記録である。
本研究では、中井久夫氏による寛解過程論を理論的基盤とし、回復段階に応じた「安全感の生起」とそれを可能にする技法を明らかにすることを目的としている。そのため、33名の入院患者の協力を得て、異なる回復段階の患者を混合した集団精神療法の治療メカニズムを検討し、治療要因調査と逐語録による行動評定の二軸データを統合し、安全感の体験を構造的に分析することで、治療的体験と介入技法を段階別に特定した。結果、開始期における安全感の体験は、「対象の安定した存在の提供」「依存・攻撃的感情の受容」「自我境界の保障」「支持的風土の醸成」という四つの治療メカニズムによって支えられていることが明らかとなった。多様な回復段階の患者を組み合わせることによる相乗的効果も見出され、慢性後期状態の患者には「絶望に触れ始める」という治療的意義があること、臨界期の患者には普遍性の体験が特有の不安への対処と関係することも示唆された。
対人的安全感の保障は、人と人とが心で何かに取り組む際の普遍的な前提条件である。本書は、最も傷つきやすいとされる統合失調症者の安全感の構造を解き明かすことで、あらゆる臨床の場における「安全な治療関係」を問い直す契機を提供する一冊である。
本研究では、中井久夫氏による寛解過程論を理論的基盤とし、回復段階に応じた「安全感の生起」とそれを可能にする技法を明らかにすることを目的としている。そのため、33名の入院患者の協力を得て、異なる回復段階の患者を混合した集団精神療法の治療メカニズムを検討し、治療要因調査と逐語録による行動評定の二軸データを統合し、安全感の体験を構造的に分析することで、治療的体験と介入技法を段階別に特定した。結果、開始期における安全感の体験は、「対象の安定した存在の提供」「依存・攻撃的感情の受容」「自我境界の保障」「支持的風土の醸成」という四つの治療メカニズムによって支えられていることが明らかとなった。多様な回復段階の患者を組み合わせることによる相乗的効果も見出され、慢性後期状態の患者には「絶望に触れ始める」という治療的意義があること、臨界期の患者には普遍性の体験が特有の不安への対処と関係することも示唆された。
対人的安全感の保障は、人と人とが心で何かに取り組む際の普遍的な前提条件である。本書は、最も傷つきやすいとされる統合失調症者の安全感の構造を解き明かすことで、あらゆる臨床の場における「安全な治療関係」を問い直す契機を提供する一冊である。
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