商品紹介
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よるべき価値基準が失われた世界で、実存的社会的中心をどこに求めるか。第一次世界大戦からワイマール期を経てナチズムの時代を生きた作家、トーマス・マンの思想的歩みは、この問いとの格闘の軌跡であった。本書は、マンの小説と論説の大部分を同時代の政治状況への応答と捉え、その政治思想を、市民性との関わりを軸に明らかにする。初期作『ブッデンブローク家の人びと』『非政治的人間の考察』において、マンは中世都市を素材に市民的世界の原理を検討し、内面的領域と政治の分離を試みたが、『魔の山』執筆時以降、次第にその主張を放棄し、個人の内面と共同体を結びつける適切な方法を模索するに至る。この思想的変遷を経て、マンは宇宙論と認識論を構築し、教養と人文主義の再興が社会的連帯に寄与すると期待して、それを可能にする政治体制として社会主義に希望を託す。しかし、ナチズムの台頭によりその実現を阻まれ、亡命生活へと入っていく。高まる危機感の中で彼が主張した戦闘的デモクラシーとはどのような政治体制だったのか。天才的芸術家による秩序、「上からのデモクラシー」のもつ意味とは何か。そして晩年、アドルノとの共同作業の末に結実した『ファウストス博士』の音楽論がもたらす帰結とは何かを、作品の精緻な読解を通じて解明する。内外の膨大なマン研究を礎に、政治的作家という側面を浮き彫りにし、政治思想史研究に物語と政治という新たな息吹を吹き込む野心作。
【目次より】
凡例
序章
第一章 芸術家と市民 初期作品にみる市民の諦念から芸術家のイロニーヘの移行
第二章 共感と政治 『非政治的人間の考察』における内面性と政治の分離
第三章 共和国のエートスを求めて 革命期および『魔の山』執筆時における有機体概念の発見
第四章 個人と社会(一) 教養概念と共同性をめぐるドイツ精神史
第五章 個人と社会(二) 『ゲーテとトルストイ』を中心とした一九二〇年代の教養論
第六章 非合理性と真理 「雪」と「黄泉下り」における認識論的探求と物語論
第七章 精神と自然 亡命初期の逸巡から戦闘的人文主義論へ
第八章 文化と野蛮 『ファウストス博士』を中心とした一九四〇年代のナチズム論
第八節 芸術作品と社会 マンとアドルノの比較から
結語
あとがき
注
参考文献
※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。
よるべき価値基準が失われた世界で、実存的社会的中心をどこに求めるか。第一次世界大戦からワイマール期を経てナチズムの時代を生きた作家、トーマス・マンの思想的歩みは、この問いとの格闘の軌跡であった。本書は、マンの小説と論説の大部分を同時代の政治状況への応答と捉え、その政治思想を、市民性との関わりを軸に明らかにする。初期作『ブッデンブローク家の人びと』『非政治的人間の考察』において、マンは中世都市を素材に市民的世界の原理を検討し、内面的領域と政治の分離を試みたが、『魔の山』執筆時以降、次第にその主張を放棄し、個人の内面と共同体を結びつける適切な方法を模索するに至る。この思想的変遷を経て、マンは宇宙論と認識論を構築し、教養と人文主義の再興が社会的連帯に寄与すると期待して、それを可能にする政治体制として社会主義に希望を託す。しかし、ナチズムの台頭によりその実現を阻まれ、亡命生活へと入っていく。高まる危機感の中で彼が主張した戦闘的デモクラシーとはどのような政治体制だったのか。天才的芸術家による秩序、「上からのデモクラシー」のもつ意味とは何か。そして晩年、アドルノとの共同作業の末に結実した『ファウストス博士』の音楽論がもたらす帰結とは何かを、作品の精緻な読解を通じて解明する。内外の膨大なマン研究を礎に、政治的作家という側面を浮き彫りにし、政治思想史研究に物語と政治という新たな息吹を吹き込む野心作。
【目次より】
凡例
序章
第一章 芸術家と市民 初期作品にみる市民の諦念から芸術家のイロニーヘの移行
第二章 共感と政治 『非政治的人間の考察』における内面性と政治の分離
第三章 共和国のエートスを求めて 革命期および『魔の山』執筆時における有機体概念の発見
第四章 個人と社会(一) 教養概念と共同性をめぐるドイツ精神史
第五章 個人と社会(二) 『ゲーテとトルストイ』を中心とした一九二〇年代の教養論
第六章 非合理性と真理 「雪」と「黄泉下り」における認識論的探求と物語論
第七章 精神と自然 亡命初期の逸巡から戦闘的人文主義論へ
第八章 文化と野蛮 『ファウストス博士』を中心とした一九四〇年代のナチズム論
第八節 芸術作品と社会 マンとアドルノの比較から
結語
あとがき
注
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